文法は分かるのに言葉が出ない?語彙を「別プロジェクト」として作る方法

3 Dec 17, 2025

文法は分かるのに、急に詰まることがあります。時制も語順も分かってて、言いたい内容もあるのに、いちばん基本の単語が出てこない。脳が「はい、無です」みたいな顔をするやつです。

だから私は「語彙を増やす」を、独立したプロジェクトとして扱っています。動画を見たら勝手に増えるかも、という曖昧な副作用じゃなくて、文法のあとに罪悪感で足すオマケでもなくて。専用の道具とルーティンがあって、手応えが分かる別プロセスです。

文法だけだと話せない理由

文法は地図。語彙は道路です。

実際の会話では、電卓みたいにルールを回してる時間はありません。頼るのは、ほぼ習慣とパターン。文法はそのパターンをきれいに保つのに役立つけど、エンジンになるのは結局「単語」と「かたまり」です。

よくある場面はこうです。

「席を予約した」と言いたい。過去形も語順も分かる。「a table」も覚えてるかもしれない。でも “book” が出てこない。動詞が抜けた瞬間、文全体が崩れます。完璧な文法でも、箱の中身が空なら使えません。

「全部分かるのに話せない」と感じるとき、だいたいここが起きています。受け身の知識が、能動の取り出しに追いついていないんです。

頭の中の「語彙」って結局なに?

単語を「知ってる」って、チェックボックスみたいに Yes/No で語られがちです。でも実際はレベルがあります。

受け身の語彙は、読んだり聞いたりして「あ、これ知ってる」と分かるもの。能動語彙は、意味を考えながら、会話の速度でサッと取り出せるものです。

多くの学習者は、受け身の語彙のほうが圧倒的に速く増えます。性格の問題じゃなくて、記憶の仕組み的にそうなります。

ここが重要で、頭の中の辞書は「一覧」ではありません。「取り出しルートの集合」です。“book = reserve” を保存して終わりじゃない。素早く引き出すための手がかりも一緒に持つ必要があります。

  1. 単語の音(発音の感触)
  2. その単語がよく住んでいる定番の文
  3. 自分がそれを使った場面の記憶
  4. 似た単語との対比
  5. 使い間違いを止めてくれる短い説明

長い検索なしで取り出せる瞬間、その単語は「使える語彙」になります。

反復は退屈じゃない。仕組みそのもの

会話で単語が出てくるようにしたいなら、反復は時間を空けて入れる必要があります。

詰め込みは定番の罠です。20分リストを眺めて「やった感」は出るのに、明日には半分消える。これは語学の才能がないからじゃなくて、脳が「これは長期保存ね」と判断できてないだけです。

役に立つ反復には、やることが2つあります。

  1. 見て分かるじゃなく、思い出す(active recall)を起こす
  2. 記憶が完全に薄れる前にもう一回来て、強化する

これが spaced repetition の考え方です。今日50回やるのが目的じゃありません。日と週にまたがって、適切な回数を、間隔を伸ばしながら繰り返して、安定させるのが目的です。

単語リストが「効く気がする」のに刺さらない理由

単語リストは人気です。簡単だし、書いて、マーカー引いて、「このテーマ終わった」感が出ます。

でもリストが鍛えやすいのは、ほぼ認識です。単語を見て、訳を見る。脳はこれを学習だと勘違いしがちです。

実用面の問題もあります。

  1. 復習のスケジュールがないので、忘れるか、まとめて地獄を見るかになりやすい
  2. 単語を「出す」圧が弱いので、能動語彙が育ちにくい
  3. 音がないことが多く、頭の中で単語が無音のままになって、実際の会話で拾いにくい
  4. 文脈が弱く、意味は分かるのに使い方が分からないまま残る

リストが悪者なわけじゃありません。ただ、「必要なときに出てくる語彙」を作る設計ではないんです。

リストよりフラッシュカードが楽になる理由

私の考えでは、フラッシュカードが強いのは、語彙を小さな反復行動に変えるからです。

良いカードは辞書の項目じゃなくて、あなたに「思い出させる」ための合図です。やってみて、間違えて、調整して、またやる。それをちょうどいいタイミングで繰り返します。

フラッシュカードが効く理由はこんな感じです。

  1. 先に答えを見ずに、思い出す練習になる
  2. 短い時間で回せるので、習慣にしやすい
  3. 忘れそうなタイミングで戻ってくる仕組みを作れる
  4. 毎日少し追加しても、負荷が暴れにくい
  5. 何が定着して、何が落ちるかが見える

さらに音声と例文があると、「訳」を覚えるのではなく、「使える言語のかたまり」を覚えられます。

良い語彙カードの中身

語彙を発話につなげたいなら、カードは意味以上を支える必要があります。

最低限ほしいのはこれです。

  1. 学習言語の単語やフレーズ
  2. 発音の支え(音声や表記)
  3. 短く分かりやすい意味の説明、必要なら補足の説明
  4. 母語への訳(文脈を意識したもの)
  5. 例文と、あると助かる使用メモ

あると効く追加要素もあります。

  1. 覚えるためのひっかかり(mnemonic)
  2. 一瞬で結びつくイメージ

「一回見たことがある」から「使える」への差は、だいたいここで生まれます。

足りない一手は「両方向」の練習

学習言語から母語へ、の練習ばかりだと、主に認識が育ちます。

それも大事。でも話すには足りません。

話すには逆方向が必要です。母語で意味を見て、学習言語で単語やフレーズを出す。この瞬間に、脳が「取り出し」を学びます。

現実的な流れはこうです。

  1. まずは見て分かる状態を作る
  2. ある程度うまく反復できたら、逆方向の練習で能動の出力を強制する
  3. 速くなって、自動化して、会話で出てきやすくなる

「知ってるのに言えない」が口ぐせなら、逆方向が抜けてることが多いです。

語彙を別プロセスとして効率よく作る

ここでやりがちなのが、盛りすぎです。必要なのは新しい人格じゃなくて、小さな日課です。

現実的に回る簡単ループはこれです。

  1. 先に今日の復習を片づけてから、新規を足す
  2. 新規は少量にする。英雄的な山盛りは作らない
  3. 音声を使う。遅く感じても無視しない
  4. 単語を声に出して1回言う。本当に声に出す
  5. 自分が理解できて、実際に使いそうな例文を2つくらい残す

数字が欲しいなら、1日10–20枚くらいの軽めプランでも、復習を崩さなければ十分回ります。秘密は枚数じゃなくて、継続と間隔です。

AIの使い方を間違えない(自分に嘘をつかない)

AIは練習と補助には本当に便利です。例えばこういうことができます。

  1. 好みの文体で例文を増やしてもらう
  2. 自分の文を自然な言い回しに直してもらう
  3. テーマを決めた短いロールプレイをする
  4. 何度も繰り返すミスを指摘してもらう

ただし、AIは語彙の暗記そのものを代わりにやってくれません。単語が自分の記憶に入って、素早く出せる状態じゃないと、必要な場面で使えません。

感覚としてはこう考えるのが健康です。

  1. フラッシュカードと間隔反復が、保存と取り出しを作る
  2. AIが、使用感をリアルにして練習を柔軟にする

AIは出力のジム。魔法の外付けハードディスクじゃありません。

進歩を静かに殺すよくあるミス

何度も見るパターンがあります。

  1. 新規を入れすぎて、復習に溺れる
  2. 音声を「任意」扱いして、あとで実際の会話が聞き取れない
  3. 単語だけ覚えてフレーズを避けて、不自然な断片で話す
  4. 受け身のまま放置して、話せないのに驚く
  5. 「見て分かった」を「知ってる」と勘違いして、会話で消えてショックを受ける

ひとつだけ直すならこれです。語彙を認識で測らない。取り出しで測る。

今日できること

やるのは「絶対できる小さい一歩」です。理想のルーティンは置いときましょう。

  1. 生活で本当に話すテーマを1つ選んで、そのための単語やフレーズを10個だけ用意する
  2. それぞれに、理解できて使えそうな例文を最低1つつける
  3. 音声を聞いて、1回だけ復唱する
  4. 新しいものを足す前に、昨日のカードを先に復習する
  5. 母語から学習言語への逆方向練習を短く入れる

これを1週間ちゃんとやるだけで、感触が変わります。単語が「引っぱり出すもの」から「勝手に出てくるもの」に寄っていきます。

My Lingua Cardsでこれをシンプルにやる方法

語彙をきれいに「別プロセス」にしたいなら、My Lingua Cardsはその流れに合わせて作られています。単語やフレーズのセットを選んで、音声、発音の表記、翻訳、短い説明、必要なら詳しい説明、例文つきのスマートなカードで練習していきます。今日やるべきカードはシステムが決めてくれるので、整理より「思い出す」に時間を使えます。

十分に反復できたら、逆方向の練習も使えるので、「分かるだけ」で止まっていた語彙が、言える側に移っていきます。さらに、会話っぽく練習したい人向けにサービス内のAIチャットモードもあります。まずは無料期間で、最大200枚までの語彙カードでルーティンを試してみて、手応えがあればそのまま続けるのがいちばん自然です。

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